2022年 12月 03日
Waldの逸話の作品集 |
Wald の逸話(選択バイアスの罠)は、これ以上調べて新しい情報が出てくる可能性はゼロですが、引用した人の妄想と捏造の産物創作物を生暖かい目で収集しています。面白いので。 まずはPV-1被弾の図。世間に流布するみんな大好きなDC-3被弾の図を見た軍事知識のある人が、これは誤りと思い描きなおしたのでしょう。創作順が逆なら、この図だけが広まるはずですからね。1次資料の出所が Center for Naval Analysis なので、米海軍で双発の戦闘用航空機ということでPV-1を選んだものと想像します。
▼Wikipedia | Survivorship bias | In the military
https://en.wikipedia.org/wiki/Survivorship_bias#In_the_military
この記事の投稿者が創作者と想像しますが、面倒なので調べていません。この記事で重要なのは、記事の内容でなく [not in citation given] のただし書き(2018年3月時点)。そう、検証不能と注意されているのです。そりゃそうだよ。1次資料に無い図なんだから。が、その後このただし書きが消えました。リファレンスを追記したおかげと思いますが、それにしても内容に尾ひれがついたままなのはどういうことなんだろう。
図の投稿者は、historyのコメントで思いの外簡単に見つかりました。2016年11月の投稿。DC-3の図に触発されて創作したのは、まず間違いないです。というか、図のキャプションに picture concept by Cameron Moll としっかり書いてあります。
▼09:33, 12 November 2016 McGeddon talk contribs 20,858 bytes +190 →In the military: add image
https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Survivorship_bias&oldid=749089960
図の初出時はhypotheticalなんてことは書いていなかったのに、これもいつの間にか追記されています。巷の逸話や被弾図がfictionであることが知られた後、それでもこの図を残したい人がhypotheticalの断りを入れることで免罪符にしているように見受けられます。日本語記事の当初の訳語は「架空の」でしたが、これまた免罪符を補強したい人が「仮説の」と捻じ曲げています。この例では架空だよ。架空!
ちなみに、Waldの覚書は1943年に作成されました。PV-1の実戦投入も同じ1943年の春。戦場は日本軍相手のアリューシャン列島。データをどのくらい集めることができ、Waldは覚書作成にどれほどの時間を許されていたのでしょうねえ。 赤い点はMoll氏のDC-3からそのままPV-1に描き移したようで、主翼つけ根の燃料タンクは、弾痕があったりなかったり。脆弱なのかそうでないのか統一されていません。セルフシーリングタンクだからどっちに分類してもいいけど、Waldの覚書では大口径砲の命中時は脆弱と例示していますね。ついでに言うと、PV-1はこっちの図の注記にあるように装甲済だぞ。
つうわけで、McGeddon氏の軍事的考証は壊滅的なので、PV-1の被弾図を引用して生存者バイアスの薀蓄を語るのは、DC-3の図を引用するよりかえってバカっぽいです。
▼もっとも正確で簡潔な「選択バイアスの罠」の罠
https://aim7.exblog.jp/238689388/
▼更新履歴
2018.03.06 記@Twitter
2018.08.08 再構成して再掲
2019.11.17 創作者を特定
2022.12.03 その後の出来事を追記
▼Wikipedia | Survivorship bias | In the military
https://en.wikipedia.org/wiki/Survivorship_bias#In_the_military
図の投稿者は、historyのコメントで思いの外簡単に見つかりました。2016年11月の投稿。DC-3の図に触発されて創作したのは、まず間違いないです。というか、図のキャプションに picture concept by Cameron Moll としっかり書いてあります。
▼09:33, 12 November 2016 McGeddon talk contribs 20,858 bytes +190 →In the military: add image
https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Survivorship_bias&oldid=749089960
図の初出時はhypotheticalなんてことは書いていなかったのに、これもいつの間にか追記されています。巷の逸話や被弾図がfictionであることが知られた後、それでもこの図を残したい人がhypotheticalの断りを入れることで免罪符にしているように見受けられます。日本語記事の当初の訳語は「架空の」でしたが、これまた免罪符を補強したい人が「仮説の」と捻じ曲げています。この例では架空だよ。架空!
ちなみに、Waldの覚書は1943年に作成されました。PV-1の実戦投入も同じ1943年の春。戦場は日本軍相手のアリューシャン列島。データをどのくらい集めることができ、Waldは覚書作成にどれほどの時間を許されていたのでしょうねえ。
つうわけで、McGeddon氏の軍事的考証は壊滅的なので、PV-1の被弾図を引用して生存者バイアスの薀蓄を語るのは、DC-3の図を引用するよりかえってバカっぽいです。
▼もっとも正確で簡潔な「選択バイアスの罠」の罠
https://aim7.exblog.jp/238689388/
▼更新履歴
2018.03.06 記@Twitter
2018.08.08 再構成して再掲
2019.11.17 創作者を特定
2022.12.03 その後の出来事を追記
by aim-120a
| 2022-12-03 19:51
| 航空宇宙
|
Comments(0)